先のことは分からない
夫、「うちも家の塗り替えをしないか?」 私、「・・・」 夫、「塗り替えするのに助成金が出るらしいぞ」 私、「知ってる」 夫、「どうして、お前、知ってるの?」 私、「家のリフォームをした時も助成金が出たでしょ」 夫、「・・・」 家のリフォームをした時の夫はサラリーマンとして働いており、家のことに無関心だったのだが、定年退職してからは暇なのか、何かと家のことに首を突っ込む。 夫、「Aさんの家、塗り替えるって」 Aさんとは夫の元同僚。 夫、「Bさんの家も、塗り替えるって」 Bさんとは、近所に住む人で夫と同年代。 夫、「うちも塗り替えしよう」 夫と私の2人だけの生活は息が詰まる、塗装業者さんが来てくれれば夫の話し相手になるかもしれないが、家の塗り替えをするとなると、助成金を得られたとしても100万円以上は掛かる。 私、「まだ早いわよ」 夫、「俺が元気なうちに、やっておきたいんだ」 夫はもっともらしいことを言っているが、私の夫は妻思いな良い夫ではない、そんなことは何十年も一緒にいる私が一番知っている。 私、「うちに家を塗り替えられるお金はないでしょ」 夫、「まだ退職金が残っているだろ」 夫が言うように、夫の退職金はまだ残っている、しかし、使ってしまったら老後の生活が心配。 平均寿命は男より女のほうが7年長い、夫は私より10歳年上、理論上は私は夫より17年長生きするため、退職金は極力使いたくない。 共感して欲しくて女友達に相談をすると、「助成金で安くなるなら、家の塗り替えをしたら」と言われてしまった。 私、「どうして?」 女友達、「貴方が長生きするとは限らないでしょ」 確かに私が先にあの世に行くかもしれない、だとしたら、夫の退職金を使わないのはもったいない、私も頑張ったのだから夫は定年退職まで働けた。 家の塗り替えをしたのは20年ぶり、塗替えをしたからといって夫婦の関係が変わるわけではない。 変わらないことは良いこと、夫婦は揃って今も健在、それで十分幸せだ。